118、僕はファンタジーを否定する/ファンタジーは存在するの!
――【葉室王司視点】
学校が終わり、今日はそのまま稽古場に直行した。
ネットでは今日から演劇祭のオンラインチケットの予約が開始されたけれど、『クラッカー逮捕』のニュースが注目をこれでもかと集めていて、埋もれ気味だ。
「匿名のホワイトハッカーがクラッカーの居場所を調べて報告。アップロード予定だったデータを削除し、ついでに被害に遭った企業のネットワークの脆弱性についてのアドバイスを各企業に送った。クラッカー集団は9割が拘束済みで、首謀者のマーカス・ヴァレンタインは逃亡中……」
さすが悪魔。さすが執事。
ファンタジー強い。
「すごいぞセバスチャン。よくやったぞー、褒めてあげる」
「ハハア、ありがたき幸せ」
本人もドヤ顔だ。いいよ、誇って。
ママの会社はこれで大丈夫だろう。よかったよかった。
でも、首謀者は逃げてるんだ?
「セバスチャン。このマーカスっていうのは捕まらなかったんだ?」
「お嬢様、今回のクラッカーグループのリーダーはマーカスではありません。そもそも、マーカスはホワイトハッカーですし」
そういえば、なりすましとか言ってたっけ?
ネットの情報を見てもそんなこと言われてないけど、セバスチャンが言うならそれが真実なのだろうか。
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆
稽古場に行くと、星牙が猫屋敷座長と真剣な顔で話し込んでいた。
星牙の兼業の件は、思えば劇団の側にも内緒だったんだよね。
あっちにもこっちにも説明して、大変そう。
【西】のメンバーたちは遠巻きに2人を見ていた。
どう受け止めてどんなリアクションを返したらいいのか、戸惑ってるのかな?
こういう時は、ちょっと明るい方に誘導しても許されるんじゃないだろうか。
「おはようございます、ジョバンニ王司です。ザネリでもあります。我らがカンパネルラさんの風邪が治ってめでたい! と思った今でした!」
風邪が治ったのはめでたいだろ。
視線を巡らせると、メンバーは「う、うん」「役アピールが激しい」と頷いた。
「さらに、カンパネルラさんは話題性もあって、宣伝したら演劇祭に人を引っ張ってこれそうじゃないですか。しかも、本命が舞台と言ってくれていて、私は嬉しかったです。頼もしいなあ! 兼業はご負担も大きそうだけど、がんばってほしい!」
汗を拭うためのタオルを旗に見立てて振り回し、元気いっぱいに言うと、星牙が「なにやっとん」と笑ってくれた。
「まあ、東西どっちもゲストばっか目立ってたら格好つかんし。西の柿座の兄さん姉さんらはイマイチ目立つ気がないっぽいから、代わりにぼくが看板燃やしてやるわ!」
「星牙! 看板を燃やすなー!」
猫屋敷座長が笑いながらツッコミをいれると、他のメンバーにも笑いが広がった。雰囲気がよくなって安心だ。
タオルを引っ込めてみんなと一緒にニコニコしていると、後ろから声がかけられた。
「葉室さん」
「うひょえっ?」
西の稽古場だというのに、声をかけてきたのは火臣恭彦だった。
恭彦は額に冷えピタを貼っていた。それ、もしかして「俺、熱あるんだよね」ってアピール?
これからちょっとずつ体調悪化させて早退する演技の予定があったりする?
「どうしたんですか、恭彦お兄さん。えーと……熱があるんですか、お大事に」
反応してあげると、恭彦はちょっと嬉しそうに口元を緩ませた。
冷えピタの意図が伝わっただけで喜んでいいのか。
「……」
あっ、さくらお姉さんが見惚れてる。美形だもんね。わかるよ。でも、中身はちょっと残念なんだよね、このお兄さん。
ところで、そんな兄の指には新しい指輪が填まっており、私に指輪ケースを2つ持たせてくるのだが?
周囲から痛いほど視線を感じるのだが?
「お兄さん。なんでしょうか、この高価そうなものは?」
上目づかいで「失言に気を付けて」とアイコンタクトを送ると、恭彦は注目されている状況に気付いた様子で一歩後ろに距離を取った。
「妹さん。実は、父が『誕生日を祝ってくれたお礼にファミリーリングを贈りたい』と言いまして。せっかくなのでお母様の分も、と……」
「ファ、ファミリーリング? え、ママの分もあるの?」
なんだそれは。世の中にはそんなものがあるの?
火臣家とお揃いなのは微妙な気分になるけど、ママとお揃いの指輪はいいかもしれないな。特別な絆の証みたい。
「えっと、とりあえず、ママに見せて聞いてみます」
「そうしてくださると助かります」
恭彦はホッとした様子で頭を下げて、ふらっとよろけてみせた。
演技だな。ここは妹として手伝ってあげようか――慌てて支えてみせると、兄は「おっと……失礼しました」と儚げな表情で言い、周囲のため息を誘った。
「お兄さん、風邪ですか? あまり無理をしないでくださいね」
「ありがとうございます。少しよろけただけです」
調子を合わせてあげると、恭彦は汗を拭うように金髪をかきあげた。
汗ひとつかいてないけど、気だるそうな雰囲気は出ている。
咳をするのはやめたんだな。あれ、わざとらしかったもんね。成長を感じる……。
私も負けずと成長していかないとな。
「そういえば、葉室さん」
「ふぁい」
「八町先生が、葉室さんに資料を渡したいと仰ってました。電子資料だとハッキングの恐れがあるので、アナログで渡したいと……」
「おお。了解です、お兄さん。では、私は『八町先生を保護する部屋』に行ってまいります」
あと、お兄さんの後ろに挙動不審なトドがいます――。
「ん……? なんですか? 風邪薬? ああ、ありがとうございます、トドさん」
トドは身振り手振りで「無理しないでね!」と伝えている。身振り手振りでなんとなく感情と言いたいことが伝わるのは大したものだ。
「トドさんはいつも親切ですね。いい人だな……そうだ。これ、休憩時間にお召し上がりください。俺が焼いたスコーンです」
トドはスコーンを両腕で抱きしめるようにしてホテホテという足音と共に去っていった。なんか愛嬌があるんだよなぁ。着ぐるみのせいだろうか? 正直、なんか憎めなく思えてしまう瞬間があって困る。
いや、私よ。しっかりしろ。奴は敵だ……。
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆
「八町先生。葉室です。入りますよー」
「うん。入ってくれたまえ」
『八町先生を保護する部屋』に入ると、八町はデスクに向かって動画を編集していた。キーボードやマウスの音が環境音として途切れずに流れ続ける部屋は、割と居心地がいい。
八町の作業着は白衣だ。
白衣を着る必要性がわからないのだが、八町いわく「気分は大事」なのだとか。
デスクに近寄り作業中の編集画面を覗くと、西園寺麗華が映っていた。
『お姫様に憧れた幼少期。家は貧しく、お人形を買うことができなかったのでお人形遊びに参加するときに木の棒に葉っぱを巻いて人形だと言い張った……』
なんか胸が痛むエピソードだ。麗華お姉さんにそんな過去があったとは。
デュアルモニタには『【東】の役者たちの専用特別ムービー』とタイトルが書かれた全体進捗表とコンセプトが書いてある。
複雑で長時間かかる作業をする時に、八町が自分の方向性や作りたかったものの軸を見失わないために書いている設計図や全体地図みたいなものだ。
つまり、これを見ると何を作っているのかがわかるのだが――八町は役者ひとりひとりの「この子はこんなキャラ」というものをわかりやすく大衆に愛されるようにストーリーにして、その役者だけのショートムービーを作り、演劇祭の公式サイトで紹介しようとしているのだ。面白いことをしているなあ。
「八町。これ、【西】の役者もやりたいよ」
「江良君。それは構わないのだけど、僕の担当は【東】だし、東西全員分作るとなると僕のキャパシティをオーバーする作業量になってしまうよ」
「うん、うん。こっちで猫屋敷座長に許可を取って、動画を勝手に作って公式サイトにアップするよ」
腕のいい動画クリエイターには心当たりがあるんだ。パトラッシュ瀬川さんに頼もう。楽しみだなあ。
私のムービーにママを出してみたら、ママ喜ぶかな? 火臣家のムービーみたいにいい雰囲気のを作ってもらうぞ。
打犬の真似みたいになるけど、「血が繋がってなくても仲良し母子」ってアピールするんだ。えへへ。
「江良君。そこのテーブルの上に資料を置いてあるよ」
「了解」
八町は作業しながらテーブルの上を示した。
置かれていた紙の資料を手に取ると、手書きの文字が並んでいる。珍しい。
タイトルは……『僕はファンタジーを否定する』?
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆
――『僕はファンタジーを否定する』
最初に――親愛なる江良君へ。
僕は君に提案をしたい。
それは、君が重用している執事セバスチャンの解雇。悪魔と縁を切ることだ。
また、僕は君が信じている妄想を否定したい。
悪魔は存在しない。
悪魔憑きという概念は中世の時代には存在したが、それは精神疾患者や反社会的な言動をする者への偏見であったという説がある。
奇跡も魔法もあり得ない。
あると思われているのは、トリックだ。
君の執事は、マーカス・ヴァレンタインという名の国際指名手配のクラッカーだ。
作家である僕は空想を愛しているが、演出家・映画監督であり役者を指導する立場として、君とマーカス・ヴァレンタイン両者の現実への意識覚醒を促したい。
役者は心を役に寄り添わせ、空想の中で背に翼を生やして飛翔することが可能だ。
素晴らしいことだが、行き過ぎた没入のため、演技が終わるべき「カット」の合図を受けても心が戻らず、地に足をつけることが困難になる厄介な現象もある。
そんな役者の手を引き、帰るべき現実世界の地面に足を付けさせることは、僕の使命だと考えている。
さて、僕はまず、君に僕が把握している情報と、それを元に推理したことを共有するよ。
君の執事であり、自称悪魔のセバスチャンなる青年は、自分が悪魔だと信じている人間である。
名前は、マーカス・ヴァレンタイン(Marcus Valentine)。
年齢は26歳。
職業はホワイトハッカーだったが、俳優に挑戦したのち、精神を病んで入院。のち、病院を脱走してクラッカーになった人物だ。
経歴は以下の通り――。
ハッカー大会(DEF CON)でCTFに参加し、決勝まで進出したことで知名度が急上昇。
ハッキング界での注目度が上がった時期に、ドキュメンタリー番組や映画にインタビュー出演した。
その際にカメラ映えするルックスやカメラが回っている時の大衆向けキャラを演じる能力に目を留めた新人映画監督にスカウトされ、彼の独立映画で俳優デビュー。作中で『悪魔憑き』と呼ばれたりもするサイコパス・クラッカーの役を演じた。
この映画は賞賛されたが、上映する劇場が少なく、認知度は低い。
しかも、メソッド演技に没頭したマーカスは精神を病み、入院。
入院して数日後、脱走し行方不明になる。
そして、本当にクラッカーになった。
数々のサイバー犯罪に手を染め、現在は国際指名手配犯となっている。
僕が思うに、江良君の執事セバスチャンは、マーカス・ヴァレンタインだ。
君も、聞いたことがあるかもしれないが、僕が聴取した話だと、彼は「初めてこの世界で自我を得たばかりの頃、ふわふわとしていた」。精神的に錯乱していたと思われる。
彼は、その時「自分が小さな昆虫だ」と認識していたらしい。
そして、「街中で乱暴なキッズに追いかけまわされて困っていて、街路樹に隠れた」――これは、病院から脱走した彼が追われて隠れていたのではないかと思われる。
彼はその後、「人間を模倣した」と申告している。
そして、赤リンゴアプリというアプリを作った。
僕が疑問なのは、彼が本当に悪魔なら、別にアプリなんか作らなくてもいいだろう、という点であった。
彼は悪魔ではなく人間のクラッカーなので、アプリという道具を使って奇跡を演出している――そうではないか?
さて、彼は悩めるターゲットを選別した。
精神的に衰弱していて判断力が低下していたり、強い欲望を抱いていて誘惑に弱い者たちだ。
彼らのスマホにアプリを遠隔でインストールやアンインストールをした。
それくらい彼のスキルがあれば容易だろう?
おそらく積極的にインフルエンサーを利用しただろうね。インフルエンサーには影響力がある。
協力者である仲間のクラッカーもいたようだし、仲間と協力して「アプリに願いを叶える力がある」とインフルエンサーに信じさせ、「みんなが知っている不思議なアプリ」として都市伝説に仕立て上げた。
実際に願いが叶ったり、代償を払ったと思われる例があるのは一見、非現実的だが、彼のクラッキング能力に俳優としての強い暗示力を合わせて可能にしているのだろうか? 仲間をサクラ役にして騙したりもしているかもしれない。
例えば、江良君の体験を紐解いてみようか。
1、僕が心肺停止状態だった。
2、その際、もともと「人が近づいて来る」という状況だった。
3、江良君は蘇生を願った。詐欺師は「願いを叶える」と宣言した。
4、人がやってきて僕に心肺蘇生をほどこし、僕は蘇生した。
――これは、3番を削除しても4番の結果が得られる可能性は十分にあるよね。君が願わなくても、僕は助かったのではないだろうか。
では、代償はというと、君、「代償で右目が見えなくなった」と体験を語っていたけれど、病院で診察してもらったりはしていなくて、「見えるふりをする」という選択を取っている。
役者である君の性質として、与えられた設定を本当のことのように思いこむ能力の高さがある。
君は、詐欺師の暗示を監督からの設定指示のように呑み込み、本当は見えているのに見えていないと思い込んでいたのではないだろうか。
なにより不可解なのが、君がセバスチャンという悪魔を受け入れていることだよ。
君の話を聞いていると不思議になるんだ。
「僕だったら、そのタイミングでもっと詳しく事実を確認する」とか「僕だったら、執事を解雇して遠ざけたり、悪魔について調べて悪魔祓いをしたりする」とか……アプリについても、被害者が再び出る可能性があるのだから、警察に届け出するとか……。
君は洗脳されていて、深く考えないようにコントロールされているのではないか。
僕は、そう疑念を抱いている。
そして、君を洗脳している詐欺師マーカス・ヴァレンタインも、「悪魔憑きであり、サイコパスであるクラッカー」という役に深く没入し、戻ってこれなくなっていると思われる。
彼に演技指導をした監督は、行き過ぎた演技指導について後悔し、彼のことを大変心配している。
また、彼は国際指名手配されていて、懸賞金が懸けられている。
2.5億――役に入り込む前の、元の人格に戻した状態で引き渡せば3.6億だ。かなり特殊な案件だよね。それだけ、彼は脅威で、同時に人材としての価値があるんだな。
僕は演劇祭を利用し、悪魔祓いをマーカス・ヴァレンタインに仕掛ける。
「悪魔祓いにより、君に憑いていた悪魔は祓われた。君が演じていた芝居は終わった。カットだよ」と演技の終了を告げようと思う。彼を元のホワイトハッカーに戻して警察に引き渡し、懸賞金をゲットする。
また、せっかくなので、彼を演劇祭の役者たちの演劇クオリティ向上の役に立てたい。
特に月組の役者に顕著なのだが、彼らは地に足を付けすぎていて、「世の中には不思議なことや、奇跡がない」という意識が強い。
不思議の国のアリスを現実主義な気持ちで演じてしまうものだから、「そんなことはない。この世にはオカルトがあるんだぜ」とちょっとおどかしてあげて、さらに彼ら自身で悪魔祓いをさせ、「悪魔を祓った」という成功体験も積ませたい。もちろん、僕が彼らに与える体験は本物の悪魔祓いではないけれど。
長くなったが、そんなわけで僕は君とマーカス・ヴァレンタインが信じているファンタジーを否定する。
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆
「なっっが……長いよ、八町。忙しいだろうに変なことばかりして……」
読み終えた私は、八町を見た。
八町は私の反応を気にしている気配だが、視線は作業中の画面に注ぎ、手を動かし続けている。
こいつ、さてはあれこれ手を出し過ぎて進捗に余裕がないんだな。
「あのね、八町。私は思うのだけど、八町は大人になってしまったな。『超常現象なんてトリックだ』って一生懸命に理屈をこねて否定しようとして……地に足を付けすぎているのは、八町じゃないか。誰よりも現実主義なのは八町じゃないか。そんなんで、月組の子たちに『そんなことはない。この世にはオカルトがあるんだぜ』って言うの?」
八町は手を止めた。
カタカタとキーボードやマウスの音が鳴り続けていた室内が、しんとする。
私は子供に戻ったけど、八町は歳を取ったままだ。
八町の髪に混ざる白髪を見て、ふと、そんなことを考えた。
八町だけじゃない。
火臣打犬も、江良がリターンした、本来進むはずだった道の先を順調に(?)歩いて行っている。
私はこの時、ピーターパンの気分になった。
「ファンタジーを否定した先には、私というファンタジーな存在の否定もあるんだよ。例えば不思議なことが一切ないはずだという結論を求めていけば、『私は自分が江良だと思い込んでいるだけの葉室王司』なんて説だって出てきてもおかしくないんだよ」
私は間違いなく江良だ。
確信をもって言えるのは、他者に言ったこともなければ、日記などにも書いたことのない数々の記憶があるからだ――例えば、本当に幼い頃に施設でおねしょをしたけど隣の子がやったことにしちゃったとか。
初めて夢精した時とか。初めて買ったエロ本とか……。うーん、懐かしい。
少ししんみりと言うと、八町は揺れる瞳でこちらを見た。
「君を否定したりはしないよ。でも……君、どんどん別人みたいになっていく……君、親に愛されていて、家族やお友だちと楽しく日常を謳歌している女の子って感じなんだ……僕はそれを見るたびに、複雑な気持ちになるんだよ」
八町は手でくしゃりと自分の髪を乱し、首を振った。
気持ちを持て余しているんだ。まあ、知り合いのアラフォー男が女子中学生になってキャッキャしてたら微妙な気持ちになるよね、わかる。ごめんよ。
「別人になっていくよ。八町だって、変わっていくよ。人間は常に変わっていくさ。あとね、本当に申し訳ないんだけどね――セバスチャンは、マーカス・ヴァレンタインではな……い……?」
言いかけて、私は首をかしげた。
あれ? マーカスの可能性もあるように思えてきたぞ? 別にセバスチャンがマーカスでもおかしくないような。
私が首をかしげると、八町も「ん?」と首をかしげた。真似をするな。
「うーん?」
「どうしたんだい、江良君」
「……マーカス・ヴァレンタインを名乗るクラッカーは、マーカスではない。とりあえず、これは確実だと思う」
そうそう。
マーカス・ヴァレンタインは成りすましによりサイバー犯罪の冤罪を着せられているんだ。
「マーカスは、病院を脱走した。精神崩壊したマーカスに悪魔が憑依した。これだと、どう?」
八町に意見を求めると、八町は「君が憑依という現象が存在したいことにしたいのはわかったよ」と肩をすくめた。
いや、だって私は憑依しているんだもの。
ファンタジーは存在するの!




