表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋と愛に挟まれて死ぬ  作者: 夢乃間
エンドレス
47/47

23時55分

 目を覚ますと、僕は自室のベッドで横になっていた。外は酷い吹雪なのか、窓から見える景色は白一色だった。

 ベッドから起き上がり、部屋を出て一階のリビングに下りていくと、キッチンには見慣れた女性の姿があった。


「おはよう、水樹君」


 彼女は木島敦子。敦子姉さんと呼んでいる。姉のようであり、母のようでもある彼女は、僕の身の回りの世話をしてくれる。食事や掃除、果ては暇つぶしまで、その全てに彼女は全力を注ぐ。

 テーブルの席に座ると、今日の朝食が運ばれてきた。今日の朝食は、白米とワカメの味噌汁、キュウリの漬物、何かしらの焼き魚。日本風だ。昨日は確か、一口サイズに切られたフランスパンに、生ハムとレタスとチーズが挟まれたサンドイッチだったはず。  

 

「さぁ、食べましょう。朝食を終えたら、今日は少し大掃除をしようと思ってるの。手伝ってくれる?」


 僕は頷いた。断る理由が無いから。


「ありがとう! 私と水樹君が一緒に住み始めて、今日で1年。思い出の品や写真を飾る為に、古い物を捨てようと考えてるの」


 1年……そうか、1年か。一緒に住み始めたのが昨日からだったようにも思えるが、もう1年も経ったのか。敦子姉さんとは色々な場所に行った。色んな場所に行って、並んで歩いて、それで……それで……あれ? なんだろう、何かおかしい。

 本当に、1年経ったのか? 昨日食べた朝食は、本当にサンドイッチなのか? 古い物を捨てるって、その古い物は何なの? 

 何かが足りない。物ではなく、この場にいる誰かが。誰だっけ……確か、確か、確か……どうして、思い出せないんだ? 

 やっぱりおかしい。僕の記憶、この家、外の風景、全部に違和感を覚えてしまう。まるで、ここが現実ではないような……そう、現実じゃ、ない……僕は、どうなって、るんだ……?

 

「水樹君」


 顔を上げると、敦子姉さんが僕を見つめていた。その瞳に映る僕は、まるで自分自身とは思えない程に、酷く怯えた表情を浮かべていた。


 目を覚ますと、僕は自室のベッドで横になっていた。外は酷い吹雪なのか、窓から見える景色は白一色だった。

 ベッドから起き上がり、部屋を出て一階のリビングに下りていくと、キッチンには見慣れた女性の姿があった。


「おはよう、水樹君」


 彼女は木島敦子。敦子姉さんと呼んでいる。姉のようであり、母のようでもある彼女は、僕の身の回りの世話をしてくれる。食事や掃除、果ては暇つぶしまで、その全てに彼女は全力を注ぐ。

 テーブルの席に座ると、今日の朝食が運ばれてきた。今日の朝食は、白米とワカメの味噌汁、キュウリの漬物、何かしらの焼き魚。日本風だ。昨日は確か、一口サイズに切られたフランスパンに、生ハムとレタスとチーズが挟まれたサンドイッチだったはず。  

 

「さぁ、食べましょう。朝食を終えたら、今日は少し大掃除をしようと思ってるの。手伝ってくれる?」


 僕は頷いた。断る理由が無いから。


「ありがとう! 私と水樹君が一緒に住み始めて、今日で1年。思い出の品や写真を飾る為に、古い物を捨てようと考えてるの」


 1年……そうか、1年か。一緒に住み始めたのが昨日からだったようにも思えるが、もう1年も経ったのか。敦子姉さんとは色々な場所に行った。色んな場所に行って、並んで歩いて、それで……それで……あれ? なんだろう、何かおかしい。

 本当に、1年経ったのか? 昨日食べた朝食は、本当にサンドイッチなのか? 古い物を捨てるって、その古い物は何なの? 

 何かが足りない。物ではなく、この場にいる誰かが。誰だっけ……確か、確か、確か……どうして、思い出せないんだ? 

 やっぱりおかしい。僕の記憶、この家、外の風景、全部に違和感を覚えてしまう。まるで、ここが現実ではないような……そう、現実じゃ、ない……僕は、どうなって、るんだ……?

 

「水樹君」


 顔を上げると、敦子姉さんが僕を見つめていた。その瞳に映る僕は、まるで自分自身とは思えない程に、酷く怯えた表情を浮かべていた。どうしてそんな表情を浮かべているのか、僕はようやく理解した。


 目を覚ますと、また僕は自室のベッドで横になっていた。ベッドから起き上がり、部屋を出て一階のリビングに下りていくと、キッチンには敦子姉さんがいた。


「おはよう、水樹君」


 僕の体は勝手にテーブルの席へと座り、そして今日の朝食が運ばれてきた。朝食のメニューは、白米とワカメの味噌汁、キュウリの漬物、何かしらの焼き魚。

 やはり同じだ。  

 

「さぁ、食べましょう。朝食を終えたら、今日は少し大掃除をしようと思ってるの。手伝ってくれる?」


「……あつこ、ねえ、さん」


 喉の奥で詰まっていた言葉を捻り出す。僕の体は既に僕の意思と離れている。辛うじて言葉を発する事が出来たが、赤子のように上手く発音出来ない。

 僕が言葉を発したのを目にした敦子姉さんは、驚いたのか、目を見開く。そしてすぐに、優しい微笑みを僕に向けてきた。


「……本当に強い子ね。水樹君は」


「どう、して……!」


「どうして? 私は言ったはず。私は、寂しがり屋だって。もうすぐ時間みたい。私達は23時55分から、0時までの5分間の暮らしを続ける。永遠に、ね。この限られた時間の中で、永遠に愛し合いましょう」


「……ぜったい、じゆうを、とり、もど、す……!」


「フフ。水樹君と自由に話せる日を楽しみにしてるわ」 


 何処からか、時計の針の音が聴こえてくる。やがて針が型にハマったかのような音がすると、意識を朦朧とさせる鐘の音が鳴り響いた。


「おやすみなさい。また23時55分に逢いましょう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ