23時55分
目を覚ますと、僕は自室のベッドで横になっていた。外は酷い吹雪なのか、窓から見える景色は白一色だった。
ベッドから起き上がり、部屋を出て一階のリビングに下りていくと、キッチンには見慣れた女性の姿があった。
「おはよう、水樹君」
彼女は木島敦子。敦子姉さんと呼んでいる。姉のようであり、母のようでもある彼女は、僕の身の回りの世話をしてくれる。食事や掃除、果ては暇つぶしまで、その全てに彼女は全力を注ぐ。
テーブルの席に座ると、今日の朝食が運ばれてきた。今日の朝食は、白米とワカメの味噌汁、キュウリの漬物、何かしらの焼き魚。日本風だ。昨日は確か、一口サイズに切られたフランスパンに、生ハムとレタスとチーズが挟まれたサンドイッチだったはず。
「さぁ、食べましょう。朝食を終えたら、今日は少し大掃除をしようと思ってるの。手伝ってくれる?」
僕は頷いた。断る理由が無いから。
「ありがとう! 私と水樹君が一緒に住み始めて、今日で1年。思い出の品や写真を飾る為に、古い物を捨てようと考えてるの」
1年……そうか、1年か。一緒に住み始めたのが昨日からだったようにも思えるが、もう1年も経ったのか。敦子姉さんとは色々な場所に行った。色んな場所に行って、並んで歩いて、それで……それで……あれ? なんだろう、何かおかしい。
本当に、1年経ったのか? 昨日食べた朝食は、本当にサンドイッチなのか? 古い物を捨てるって、その古い物は何なの?
何かが足りない。物ではなく、この場にいる誰かが。誰だっけ……確か、確か、確か……どうして、思い出せないんだ?
やっぱりおかしい。僕の記憶、この家、外の風景、全部に違和感を覚えてしまう。まるで、ここが現実ではないような……そう、現実じゃ、ない……僕は、どうなって、るんだ……?
「水樹君」
顔を上げると、敦子姉さんが僕を見つめていた。その瞳に映る僕は、まるで自分自身とは思えない程に、酷く怯えた表情を浮かべていた。
目を覚ますと、僕は自室のベッドで横になっていた。外は酷い吹雪なのか、窓から見える景色は白一色だった。
ベッドから起き上がり、部屋を出て一階のリビングに下りていくと、キッチンには見慣れた女性の姿があった。
「おはよう、水樹君」
彼女は木島敦子。敦子姉さんと呼んでいる。姉のようであり、母のようでもある彼女は、僕の身の回りの世話をしてくれる。食事や掃除、果ては暇つぶしまで、その全てに彼女は全力を注ぐ。
テーブルの席に座ると、今日の朝食が運ばれてきた。今日の朝食は、白米とワカメの味噌汁、キュウリの漬物、何かしらの焼き魚。日本風だ。昨日は確か、一口サイズに切られたフランスパンに、生ハムとレタスとチーズが挟まれたサンドイッチだったはず。
「さぁ、食べましょう。朝食を終えたら、今日は少し大掃除をしようと思ってるの。手伝ってくれる?」
僕は頷いた。断る理由が無いから。
「ありがとう! 私と水樹君が一緒に住み始めて、今日で1年。思い出の品や写真を飾る為に、古い物を捨てようと考えてるの」
1年……そうか、1年か。一緒に住み始めたのが昨日からだったようにも思えるが、もう1年も経ったのか。敦子姉さんとは色々な場所に行った。色んな場所に行って、並んで歩いて、それで……それで……あれ? なんだろう、何かおかしい。
本当に、1年経ったのか? 昨日食べた朝食は、本当にサンドイッチなのか? 古い物を捨てるって、その古い物は何なの?
何かが足りない。物ではなく、この場にいる誰かが。誰だっけ……確か、確か、確か……どうして、思い出せないんだ?
やっぱりおかしい。僕の記憶、この家、外の風景、全部に違和感を覚えてしまう。まるで、ここが現実ではないような……そう、現実じゃ、ない……僕は、どうなって、るんだ……?
「水樹君」
顔を上げると、敦子姉さんが僕を見つめていた。その瞳に映る僕は、まるで自分自身とは思えない程に、酷く怯えた表情を浮かべていた。どうしてそんな表情を浮かべているのか、僕はようやく理解した。
目を覚ますと、また僕は自室のベッドで横になっていた。ベッドから起き上がり、部屋を出て一階のリビングに下りていくと、キッチンには敦子姉さんがいた。
「おはよう、水樹君」
僕の体は勝手にテーブルの席へと座り、そして今日の朝食が運ばれてきた。朝食のメニューは、白米とワカメの味噌汁、キュウリの漬物、何かしらの焼き魚。
やはり同じだ。
「さぁ、食べましょう。朝食を終えたら、今日は少し大掃除をしようと思ってるの。手伝ってくれる?」
「……あつこ、ねえ、さん」
喉の奥で詰まっていた言葉を捻り出す。僕の体は既に僕の意思と離れている。辛うじて言葉を発する事が出来たが、赤子のように上手く発音出来ない。
僕が言葉を発したのを目にした敦子姉さんは、驚いたのか、目を見開く。そしてすぐに、優しい微笑みを僕に向けてきた。
「……本当に強い子ね。水樹君は」
「どう、して……!」
「どうして? 私は言ったはず。私は、寂しがり屋だって。もうすぐ時間みたい。私達は23時55分から、0時までの5分間の暮らしを続ける。永遠に、ね。この限られた時間の中で、永遠に愛し合いましょう」
「……ぜったい、じゆうを、とり、もど、す……!」
「フフ。水樹君と自由に話せる日を楽しみにしてるわ」
何処からか、時計の針の音が聴こえてくる。やがて針が型にハマったかのような音がすると、意識を朦朧とさせる鐘の音が鳴り響いた。
「おやすみなさい。また23時55分に逢いましょう」




