表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

800文字ショートショート

マコトの嘘

作者: 一色 良薬

 最近気づいたのだが、どうやら俺には嘘を現実にする力があるらしい。


 例えば明日の降水確率が八十パーセントだとして「明日は真夏日ばりの快晴になるんやって!」とうそぶく。周りの人たちはオオカミ少年ばりに煙たく扱い、まともに取り合わない。


 しかし俺の嘘の通りに「真夏日ばりの快晴」が訪れる。律儀に傘を握っている連中を横目に、ほらなというドヤ顔で通り過ぎていく時の快感といったら。


 天気予報なんて確率の問題だから、なんとでも言えるじゃないかって? こっちだってそう言われるのは想定済みだ。


 小テストの正しい範囲ではなく、嘘の範囲を広める。


 オカンのプリンを食べてしまった時に「いやオトンが食べてたで」と言う。


 捕まらない空き巣泥棒の、嘘の目撃証言。


 しょうもない嘘から最初からありもしない嘘まで。


 “嘘から出たまこと”なんてことわざの通り、次の瞬間には現実になってしまうのだ。


 何故こんな能力が目覚めたのか。俺の名前がマコトだからだろうか。


 安直ではあるし、説明にもなっていない。が、神様からの突然のギフトを使わないわけにはいかないだろう。


「聞いてや。俺、彼女できたんよ。めっちゃ美人で気立てのいい子! ホンマ運命やわ」


「ユタカ先輩いるやんか。俺、あの人の率いる軍団と一人で喧嘩して、圧勝したんやで。それから軍団のリーダーってわけや!」


「俺、最近宝くじ買ったんやけどな。なんと! 一等の五億が当たったんや! 凄いやろ。これでお金持ちの仲間入りや!」


 小さな嘘から徐々に収拾のつかない嘘をまことに変えていく。


 俺の嘘で現実にできないことなんてないと生きてきて早十五年。


 俺は脂汗が滴った借用書を両手で握りしめて震えていた。


「堀ユタカの連帯保証人? 俺が? なんかの間違いやろ。しかも三億なんて。子どもでももっとまともな嘘つくで。それにな、俺は借用書にサインなんかしたことなんかない!」


 まさか他人の嘘までまことにするなんて、一体誰が想像ついただろうか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ