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99 天井下り
天井下りという妖怪がおります。
江戸時代中期、鳥山石燕の妖怪画集『今昔画図続百鬼』にあり、長い髪を振り乱した醜い老女が、家の天井から逆さまにぶら下がった姿として描かれています。
書籍によっては、夜中に家の天井から突然現れますが、人間に対して特に危害を加えることはないとされています。
その昔。
ある寺の天井裏に天井下りが棲み着きました。
住職が読経を唱え始めると現れ、天井から逆さにぶら下がって声をかけます。
「和尚よ、毎日お疲れなことじゃのう」
「疲れなどせぬわ。こうして経を読むのは、仏に仕える身として当然のことでな」
「それでもなあ」
天井下りが長い髪を揺らしながら言葉を続けます。
「ほんと頭が下がるわい」
・頭が下がる=逆さにぶら下がる
・頭が下がる=感服する、敬服する
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)
・『今昔画図続百鬼』(こんじゃくがずぞくひゃっき)




