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96 テンジ2
テンジ1からの続き。
翌晩。
テンジが切られた手を返してくれと、山番のもとへやってきました。
山番が手を返してやると、テンジはいつもの笑い声をあげて山へと帰っていきました。
その年。
大飢饉が八丈島を襲い、山番は何日も飢えで苦しんでいました。
そんなとき。
小屋に何かが投げつけられるような音がして、山番が外に出てみると、そこには木の実がどっさりとありました。
山番はテンジがくれたのだと思いました。
「テンジ、すまんな」
山番が礼を言うと、笑い声と山の方へ駆けていく足音が聞こえました。
山番はありがたく木の実をいただき、大切に小屋の中にしまいました。
翌朝。
それらはすべて牛の糞に変わっていました。
「クソー」
・クソ=糞




