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932 ゲドガキのバケモン
ゲドガキのバケモンという妖怪がおります。
ゲドガキは五島列島の福江島にある土地の名前で、長崎県五島市に次のような話が伝わっています。
牛松という子供がいました。
ある晩。
牛松が泣くので、父親が「ゲドガキのバケモンに食わすぞ!」と叱りました。
すると外から声がします。
「ならオレに食わせろ!」
驚いた父親は、とっさにその場逃れの返事をしました。
「牛松が一人前になったらな!」
数年後。
若者に育った牛松がゲドガキを通っていると、「汝の父から汝はもらったぞー」と、化け物が襲いかかってきました。
このとき。
化け物が荷物を掴んだ際に背負い紐が切れ、牛松はからくも逃げることができました。
背後で声がします。
「ヒィーモー」
・ヒィーモー=ひーもー(紐)




