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928 死人の怪1
死人の怪は江戸時代中期、上野忠親の『雪窓夜話抄』に次のような話があります。
延宝年間の某年某月。
鳥取の日香寺に、一閑という名の僧が住職を務めていました。
ある日。
一閑は死人を弔った夜、棺桶を本堂の隅に安置して通夜の番をつけました。
夜半過ぎ。
番の者がうとうと居眠りをしていると、死人が棺桶のふたを破って立ち上がりました。
番の者は驚いて住職のもとへ走りました。
一閑が本堂へ行くと、死人は堂の横手の板戸に登っており、一閑がそれを箒で叩くと、死人は落ちて床に倒れ伏しました。
番の者が問いました。
「住職、いったいどういうことでしょう?」
「死人にネズミが憑いたのだ。おまえ、ちゃんとネズミ番をしていたのだろうな」
・ネズミ番を=寝ずに番を=鼠番を
・延宝年間=1673~1681年
・上野忠親(うえのただちか・1684~1755・江戸時代中期の鳥取藩士)
・『雪窓夜話抄』(せつそうやわ・昔話、怪談)




