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909 十王堂様の仏像
十王堂様の仏像は柳田國男の『遠野物語拾遺』に次のような話があります。
遠野町の会下にある十王堂でのこと。
村の子供たちが古ぼけた仏像を馬にして遊んでいるのを、近所に住む男が見て、「神仏を粗末にするものではない」と言って叱り飛ばし、仏像の十王堂様を堂内に納めた。
するとこの男は、その晩から熱を出して病んだ。
さらには、十王堂様が枕神になって立ち、「せっかく子供らと面白く遊んでいたのに、なまじ気の利くふりをして、とがめ立てなどするのが気に食わぬ」と言って、殴りかからんばかりに詰め寄った。
男はさっそく巫女を頼んで、これから気をつけますという約束をして、許されたという。
十王堂様が男に言います。
「ブツゾー」
・ブツゾー=ぶつぞー=仏像
・枕神=夢の中に現れて神託を告げる神
・柳田國男(やなぎだくにお・1875~1962・民俗学者、官僚)
・『遠野物語拾遺』(遠野郷に古くより伝えられる習俗や伝説、怪異譚)