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898 轟淵の乙姫
轟淵の乙姫は伝説の一種で、熊本県八代市に次のような話が伝わっています。
その昔。
古屋敷村に和助という男が住んでいました。
ある日。
和助は村にある轟淵に釣りに行きました。
魚がまったく釣れないまま日が沈む頃、淵の水面に微笑む女の姿が映りました。
和助は気品のある美しい女に魅せられて、それからは何も手につかず、毎日のように轟淵に出かけました。
お盆の日。
水面に映った女が微笑んで手招きをすると、和助はおどり上がって淵に飛び込み、そのまま死んでしまったのか、戻ってくることはありませんでした。
その後。
淵のそばにある椎の木に毎晩、火が灯るようになったといいます。
この轟淵の乙姫。
ツレナイのでした。
・ツレナイ=釣れない=つれない