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895 腹中の怪物
腹中の怪物は江戸時代中期の医師、加藤曳尾庵の『我衣』に次のような話があります。
文化10年7月2日付の岡山からの書状。
「景福寺の弟子僧、惟雲は4、5年前から大食いとなり、近年は1日に3升の飯を食いました。
当年春より病を発し、6月中ごろ危篤となって意識朦朧の容態だった16日の朝、看病の者が病床に鶏卵のようなものがあるのを見つけました。
病人の糞だろうと捨てようとしたのを院主が見て怪しみ、手に取ってよく見ると、それは柔らかな肉体で、目、鼻、口があり、口の中には銀針のごとき歯が生えておりました。
病僧は翌17日に死に、怪物は裏の小川へ捨てました」
この腹中の怪物。
病人が腹にすえかねたのでした。
・腹にすえかねる=我慢ができない
・文化十年=1813年
・三升=30合
・加藤曳尾庵(かとうえびあん・1763~?・文人、医師)
・『我衣』(わがころも・随筆)