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891 芋虫嫌い
芋虫嫌いは江戸時代後期、肥前平戸藩主の松浦静山の随筆『甲子夜話』に次のような話があります。
何の書物で読んだのだったか覚えていない。
武田信玄は芋虫が大いに苦手だったそうだ。
あるとき、武田の重臣の馬場美濃守信房が信玄の前にまかり出た。
美濃守は捧げ持っていた三方を信玄に差し出した。
その三方にはたくさんの芋虫がうごめいていた。
信玄はピクッと眉を動かした。
これを見て、美濃守は挑発した。
「当代一の勇猛な我が殿でも、この虫を手に取ることはできませんかな?」
「馬鹿を申すな! そんな虫けら、何ともないわ!」
信玄が芋虫を掴んだとたん、たちまち手の色が変わったという。
この信玄。
虫が好かないのでした。
・虫が好かない=嫌な感じがして気に入らない
・武田信玄(たけだしんげん・1521~1573・戦国時代の武将)
・三方=供物を載せる台
・松浦静山(まつらせいざん・1760~1841・肥前平戸藩主)
・『甲子夜話』(かっしやわ・随筆)