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890 山わろ
山わろという妖怪がおります。
これは深い山奥にいる大男で、三好想山の『想山著聞奇集』に次のような話があります。
木曽の山中の出来事。
木こりが大きな音が響いたので振り返ると、そこには頭の禿げた赤い顔をした大男が、茶碗ほどもある大きな目を白く光らせて立っていました。
木こりはすぐに山小屋へ逃げ込みましたが、そのまま寝込んでしまったといいます。
また文政年間。
木曽の山中で藤のカズラで編んだ直径一メートルほどの帽子らしきものが見つかり、その大きさからして山わろのものではないかといわれましたが、長らくその真相はわかりませんでした。
この山わろ。
その後、あの帽子のようなものがカツラだったということがわかりました。
・カツラ=カズラ=カツラ
・文政年間=1818~1830年
・三好想山(みよししょうざん・?~1850・書家、随筆家)
・『想山著聞奇集』(しょうざんちょもんきしゅう)・随筆)