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889 鼻欠け地蔵
鼻欠け地蔵は熊本県天草市に次のような話が伝わっています。
ある年。
干ばつで水争いが始まりました。
某百姓は夜中、こっそり自分の田に水を引き入れたのですが、翌朝になると、自分の田の水はすっかり干上がっていて、地蔵堂の田にばかり水が溜まっていました。
翌晩も同じでした。
百姓が犯人を捕まえようと物陰に隠れていると、お堂から2尺ほどの小僧が出てきて、周囲の田の水口を止め、すべて地蔵様の田へと流れるようにしました。
百姓が鎌で切りつけたところ、小僧はお堂の方へと逃げて姿を消しました。
翌朝。
お堂の中の地蔵様は泥だらけで、鼻が欠け落ちていました。
この鼻欠け地蔵の話。
百姓は鼻にカケてこのことを話したといいます。
・カケ=欠け=かけ
・鼻にかける=得意げになる
・二尺=約60センチ