879/904
879 馬に乗った大蛸
馬に乗った大蛸は佐渡島の怪談集『佐渡怪談藻塩草』に次のような話があります。
その昔。
和泉村の百姓が馬を引いて帰る途中、その夜は板町でとどまることとし、馬を浜に引き出して波よけの柵に繋いだ。
翌朝。
繋いだ柵に馬の姿がなく、人々が「北沢神明社に化け物が出た。馬に乗っている」と叫んでいる。
行ってみると蛸が二本の足を手綱にし、四本の足を腹帯とし、残り二本はムチにしていた。
百姓は馬を引いて神社を下った。
大蛸は百姓の獲物となり、大釜で煮て食べたが、その足の長さは畳一畳をゆうに超えていたという。
蛸は馬を獲ろうとしたのだろうが、反対に馬が蛸を獲っていたのである。
この大蛸。
煮て食べられたのはウマカッタからでした。
・ウマカッタ=馬勝った=美味かった(うまかった)
・『佐渡怪談藻塩草』(作者不明・1778成立・佐渡の伝奇伝説)