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869 鼠の引っ越しの怪
鼠の引っ越しの怪は、早川孝太郎の『三州横山話』に次のような話があります。
愛知県北設楽郡段嶺村の百姓の話。
ある日。
百姓が田で稲叢を作っていると、我が家から何十匹という大量の鼠が出てきた。
鼠たちは小川を飛び越え、丘の上の日当たりの良い家に向かって走っていった。
2、3日後。
農夫の元に丘の上の家の男が来た。
屋敷を売り払って引っ越すことになったので、ぜひ屋敷を買い取って欲しいと、農夫に屋敷の購入を強く勧めてきた。
百姓は初めのうちは断っていたが、結局その屋敷を買い取り、丘の上の家に引っ越した。
すると家運が上向いてきて、大いに栄えたという。
この鼠の引っ越しの怪。
ネズニ百姓を待っていたのでした。
・ネズニ=寝ずに=鼠
・早川孝太郎(はやかわこうたろう・1889~1956・民俗学者・画家)
・『三州横山話』(さんしゅうよこやまばなし・1976年刊)