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867 ニワトリの僧
ニワトリの僧は怪異の一種です。
これは僧侶の殺生への戒めで、江戸期の木版和本『絵本妖怪奇談』に次のような話があります。
その昔。
某寺の若い僧が隣の農家のニワトリを盗み、それを焼いて食べました。
ところがそれを見た者がいて住職に告げました。
「ニワトリを盗んで食べたのは本当なのか?」
住職は若い僧に詰問しました。
「私は頭を丸くし、衣を墨に染め、釈迦の流れをくんで慈悲の行をしている者です。どうしてそのような悪行ができますでしょうか」
僧がそう言ったとたん、口からコケコッコーと鳴き声がして、尻からニワトリが出てきました。
この尻から出たニワトリ。
殺されたニワトリの怨念が、若い僧の口からトリ入ったものでした。
・トリ入った=鳥入った=取り入った
・『絵本妖怪奇談』(詳細不明)