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863 手の目かじり
手の目かじりという妖怪がおります。
これは江戸時代中期、作者不詳の『諸国百物語』に次のような話があります。
その昔。
京都の七条河原に化け物が出るという評判の墓地があり、若者たちがそこで肝試しをやることになりました。
ある若者が墓地に証拠の杭を打って帰ろうとしたところ、身の丈八尺、手の平に目がついている老人が現れました。
若者は肝をつぶし、近くの寺へと逃げ込みました。
寺の僧は若者を長持の中に隠し、自分は物陰に隠れました。
やがて化物がやってきて、長持から何かをかじる音が聞こえてきました。
化物が去った後。
長持の中の若者は骨がなくなり、皮ばかりになっていたといいます。
この若者。
骨抜きにされてしまいました。
・骨抜きにされる=腑抜けになる
・『諸国百物語』(作者不詳・1677年刊行の怪談集)