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851 唐人屋敷の幽霊1
唐人屋敷の幽霊は津村淙庵の『譚海』に次のような話があります。
長崎には唐人屋敷がある。
この唐人屋敷にはしばしば幽霊が現れる。
この幽霊は日本人の目には見えないが、華人の目には見えるそうだ。
華人たちは幽霊を清国に送り返す返魂の祭を催す。
まず小さな唐船をこしらえる。
長崎で死んだ者を木像として刻む。
木像を船に乗せ、各々の姓名を記し、米穀金銀の類いを積み込む。
最後に日を選び、僧を招いて法事をして、船を海に流す。
この船は途中で沈むことなく、必ず華人の生まれ故郷に到着するので、船に乗っている霊魂も本国に帰ることになる。
その後。
幽霊が出ることはないという。
この唐人屋敷の幽霊。
船にユーレて清国に帰りました。
・ユーレ=幽霊
・華人=海外に移住し、移住先の国の国籍を取得した中国系の住民
・津村淙庵(つむらそうあん・1736~1806・歌人、国学者)
・『譚海』(たんかい・随筆集)