847/907
847 蟒蛇の怪
蟒蛇の怪は、堀麦水の『三州奇談』に次のような話があります。
山刀を持っていれば蟒蛇に呑まれることはない。
木こりに駄兵衛という者がいた。
ある日。
山刀を邪魔だと持たずにいたところ、蛇に追われることになった。
だが、蛇の姿は見えない。
ただ霧のようなものが背後にいて、悪臭のすること甚だしく、風が一帯を乱れ吹いた。
駄兵衛は追われて木に登った。
蟒蛇も後を追ってきた。
駄兵衛は枝から身を躍らせたが、空中で一呑みにされたとみえて、逆さまになった姿で消えた。
あたりは静まり返った。
蟒蛇の姿はないが、霧の中にいるらしく、3尺ばかりの白く光る霧の塊が飛行するように見えた。
この蟒蛇。
その正体は霧の中でした。
・霧の中=明らかでない
・堀麦水(ほりばくすい・1718~1783・俳人)
・『三州奇談』(さんしゆうきだん・加賀・能登・越中の奇談・怪談・珍談)