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829 野寺坊
野寺坊という妖怪がおります。
これは江戸時代中期、鳥山石燕の妖怪画集『画図百鬼夜行』にあり、それにはぼろぼろの袈裟を着た僧が廃寺の鐘のそばに立っている姿が描かれており、この僧は金銭への執心で破戒し、野寺坊になったとされています。
埼玉県新座市に野寺という地名があり、ある男がその近在で鐘を盗み出したところ、人が通りかかり、あわてて鐘ヶ渕という池に隠れたのですが、そのとき鐘を池に落としてしまったとあります。
石燕はこの話を元にして、この野寺坊を描いたのではないかといわれています。
昭和以降の解釈。
夕暮れ時、野寺坊は荒野の廃寺に現れて、無人の寺で鐘を鳴らすとしています。
この野寺坊。
破戒の原因はカネでした。
・カネ=鐘=金
・破戒=戒律を破る
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)
・『図画百鬼夜行』(がずひゃっきやこう)