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825 送り提灯
送り提灯は怪異の一種です。
これは江戸の「本所七不思議」の一つで、次のような話があります。
深夜の堀川端。
提灯がなく困っていると、前方に提灯の明かりが現れて、それはあたかも道先を示すかのように揺れ動くことがありました。
これに喜んで距離を詰めると、近づいたところで明かりは不意に消えてしまいました。
がっかりしていると再び明かりは現れ、喜んで近づくとまたしても消え、それからは現れては消えを繰り返しました。
翌朝。
気がつくとなぜか、葦の原にたたずんでいました。
「悪いものに化かされたようだ」
見まわしてつぶやくと、周囲の葦原からザワザワと声が聞こえてきたといいます。
「アッシじゃねえ、アッシじゃねえ」
・アッシ=あっし(わたし)=葦
・本所七不思議=本所(東京都墨田区)に江戸時代ころから伝承される奇談・怪談