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820 生首茸
生首茸は江戸時代中期、堀麦水の『三州奇談』に次のような話があります。
若狭国の寺西家当主が若狭入道宗寛の時代。
あるとき。
宗寛の寝所に異臭が立ち込めたことがあり、その臭いの元を調べてみたところ、天井裏で齢14、5歳の少年の生首が見つかり、それはまるで生きているかのようでした。
宗寛は屋敷の庭の隅に生首を埋めて首塚とし、桐の木を植えて墓標としました。
秋のなかば。
この首塚から愛らしい形の茸が生えました。
茎が二股に分かれているのを裂いてみたところ、茸の内に少年の顔が彫ったかのように、目、耳、鼻、口のすべてがそろっていました。
この生首茸。
首のほかは一切ありませんでした。
生首ダケでした。
・生首ダケ=生首だけ=生首茸
・堀麦水(ほりばくすい・1718~1783・俳人)
・『三州奇談』(さんしゆうきだん・加賀・能登・越中の奇談・怪談・珍談)