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82 三吉鬼
三吉鬼という妖怪がおります。
秋田県に伝承があり、江戸時代の女流文学者、只野真葛の著書『むかしばなし』に次のような話があります。
「三吉鬼は山から人里に下りてきては、酒屋で酒をあおるようにして飲み、その飲み代の代わりとして薪を置いていった。また人々は、大変な仕事があるときは酒樽を供えて三吉鬼に願をかけた。すると一夜のうちに終わることがあり、三吉鬼は多くの人々に重宝がられた」
ですがいつかしら、三吉鬼は人里に下りてこなくなりました。
現在でいうアルコール依存症を克服するため、昼は酒の代わりに苦い肝をなめ、夜は堅い薪の上に寝て、山奥で修行を積んでいたのでした。
臥薪嘗胆です。
・臥薪嘗胆=将来の成功を期して苦労に耐える
・只野真葛(ただのまくず・1763~1825・女性文学者)
・『むかしばなし』(18世紀後半の江戸・随筆)




