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805 老人火
老人火は怪火の一種です。
別名で天狗の御燈ともいい、これは天狗が灯す鬼火であるともいわれています。
また江戸時代後期、桃山人の奇談集『絵本百物語』に次のようなことが記されています。
「老人火は魔の火で、雨の夜、信州と遠州の境の山奥に現れた。
老人火に行き遭ったときは、履物を頭の上にのせれば火は脇道にそれていくが、これを見てあわてて逃げようとすると、どこまでもついてくる。
これは老人とともに現れ、水をかけても消えないが獣の皮ではたくと消える」
最後の部分。
天狗が獣や肉を嫌うという性質からきているといわれていますが、水をかけても消えない部分は今も論争が続いているといいます。
ここは水かけ論でした。
・水かけ論=双方が互いに自説にこだわり、いつまでもたっても結論に達しない議論のこと
・桃山人(とうさんじん・1804~1844・戯作者)
・『絵本百物語』(1841年刊行・奇談集)