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800 沼御前2
沼御前という妖怪がおります。
福島県大沼郡金山町の沼沢湖の主だったという大蛇で、これは人を襲って喰うことから、近隣の村人たちからたいそう怖れられていたといいます。
鎌倉時代。
領主の佐原十郎義連は、この大蛇を退治しようと家来たちを率いて船で沼に漕ぎ入りました。
雷鳴がとどろいて大蛇が現れます。
義連は刀で立ち向かいますが、船から転落して大蛇に呑み込まれてしまいました。
このとき兜にあった金の観音菩薩の加護により、義連は大蛇の腹を斬り裂いて脱出することができました。
沼御前が怒り狂います。
その直後。
義連が船の碇を沼に投げ入れると、沼御前はおとなしくなって沼の中に消えました。
イカリをしずめたのです。
・イカリをしずめる=碇を沈める=怒りを鎮める