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80 畳叩き
畳叩きは音の怪異です。
夜中、屋根や庭からバタバタと畳を叩くような音が聞こえてきて、それは東から西へと去っていくといわれ、江戸時代後期、菅茶山の随筆『筆のすさび』に次のような話があります。
冬の夜明け。
ある物好きな男が、この不思議な音の正体を見定めてやろうと、音のする方を追ったところ、常に7、8間先から音が聞こえてきたといいます。
またある男は、石から小人が飛び出てきて、石をバタバタと叩き始めたので捕まえようとしたところ、小人は石の中に逃げ込んでしまったといいます。
その後。
畳叩きの怪異は聞かなくなったのですが、小人を捕まえようとした男の消息も消えたといいます。
音沙汰がなくなりました。
・音沙汰=便り、連絡
・菅茶山(かんちゃざん・1748~1827・儒学者、漢詩人)
・『筆のすさび』(ふでのすさび・随筆)




