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790 雨降小僧
雨降小僧という妖怪がおります。
これは江戸時代中期、鳥山石燕の妖怪画集『今昔画図続百鬼』にあり、雨の降る中、中骨を抜いた和傘を頭にかぶり、提灯を持った小僧の姿が描かれています。
その解説文で雨降小僧のことを、雨をつかさどる雨師のそばにいる童子であるとしています。
仙台市出身の作家、山田野理夫著『東北怪談の旅』に次のような話があります。
岩手県上閉伊郡の仙人峠。
そこに棲む狐が雨降小僧に頼みました。
「嫁入りがあるから雨を降らせておくれ」
雨降小僧が提灯を振るとたちまち雨が降り始め、その中を狐の嫁入りが続きました。
この狐の嫁入り。
狐の嫁を乗せたウシのそばには、提灯を手にした雨降小僧がいたのでした。
・ウシ=雨師=牛
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)
・『今昔画図続百鬼』(こんじゃくがずぞくひゃっき)
・山田野理夫(やまだのりお・1922~2012・小説家、詩人)
・『東北怪談の旅』(1974年刊行・怪談集)