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785 やれな婆
やれな婆は化け狐の一種で、島根県に次のような話が伝わっています。
その昔。
出雲の国に、牛で荷物を運ぶことをなりわいとしている男がいました。
男は荷物を運ぶ途中の山道で、「やれなあ、やれなあ」とつぶやく、化け狐のやれな婆をよく見かけていました。
この日。
男はこの化け狐をこらしめてやろうと、「歩くのが大変なら牛に乗せてやろう」と声をかけました。
やれな婆が喜んで馬の背に乗ります。
男は「牛から落ちると危ないんでな」と言って、やれな婆に縄をかけ、牛の鞍にぐるぐる巻きにくくりつけました。
その体は全身、縄、縄、なわ、なわなわ……ナワナワナワナワナ……。
このやれな婆。
ワナにかかってしまいました。
・ワナ=縄
・ワナにかかる=罠にかかる




