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782 亀姫
亀姫は猪苗代城に棲んでいた妖怪で、江戸時代中期、三坂春編著『老媼茶話』に次のような話があります。
年の暮れ。
会津藩猪苗代城の城代、堀部主膳の元に禿頭の子供が現れて言った。
「亀姫様がお待ちゆえ急いで支度をせよ」
主膳が亀姫など知らぬと答えると、
「亀姫様を知らぬとは無事ではすまされぬぞ」
子供はそう言い残して姿を消した。
年明け。
城の広間の主膳の席に葬儀一式が置かれてあった。
正月18日。
主膳は厠で倒れて息を引き取った。
同年の夏、城の武士が田のそばにいた大入道を一刀のもとに斬りつけると、それは大きなムジナに姿を変えて姿を消した。
以来、城で怪異が起ることはなかったという。
この亀姫。
斬られてムジナ身でした。
・ムジナ=狢=無事な
・三坂春編(みさかはるよし・1704?~1765・会津藩士)
・『老媼茶話』(ろうおうさわ・会津地方の怪談奇話)




