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780 七本鮫1
七本鮫は鮫の姿をした竜宮の使いともいわれ、三重県に次のような話が伝わっています。
その昔。
伊勢神宮の別宮で行われた御田植祭に、七匹の鮫が的矢湾より磯部川を伝って参詣に来ました。
この七匹の鮫は、伊勢神宮の神職の磯部氏に「今日はお日柄もようて、磯部さんも大にぎわいでな」と挨拶しながら、尾をピンと跳ねたといいます。
ある日。
鮫に息子を殺されたという漁師が、七本鮫のうちの一匹を銛で刺し殺してしまいました。
それ以来。
七本鮫は六匹となって伊勢神宮に参詣するようになり、毎年お参りするたびに、仲間の一人が殺された無念を磯部氏に涙ながらに話しました。
そのとき。
六匹の鮫はサメザメ泣いたといいます。
・サメザメ=しきりに涙を流して静かに泣くさま




