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78 黒塚
黒塚は奥州の安達ヶ原に棲み、人を喰らっていたという鬼婆の伝説です。
その昔。
一人の僧が旅の途中に日が暮れ、その日の宿にこまっていると、
「お節介かもしれぬが」
老婆が親切に声をかけてきました。
老婆は岩屋に僧を招き入れたあと、「奥の部屋は絶対に見てはならぬ」と釘を刺してから、岩屋を出ていきました。
ですが僧は、奥の部屋をのぞき見てしまいます。
そこには人間の白骨が山のようにあり、僧は驚いて逃げ出しますが、老婆は鬼婆となって追いかけてきました。
絶体絶命の中。
僧が念仏を必死に唱えると、菩薩像が宙に舞い上がって矢を放ち、鬼婆を射止めました。
老婆にもどった鬼婆は思いました。
――老婆心で宿を貸さなきゃよかった。
・老婆=老婆心
・老婆心=老婆が必要以上に世話をやこうとする




