779/917
779 一目坊
一目坊という妖怪がおります。
これは江戸時代中期、三坂春編の奇談集『老媼茶話』に次のような話があります。
最上の侍、辻源四郎が塔の沢温泉で湯治をしていた際、宿で老僧と親しくなり、いつか寺に遊びに来ないかと誘われました。
数日後。
源四郎は家来数名と招かれた寺に向かいました。
しばらくして森の奥に古寺があり、そこの客殿では一つ目の小僧四、五人が人の首を集め、「ひとつ、ふたつ……」と竹籠に入れていました。
驚いて台所にまわると、そこでは一つ目の女の子二、三人が人の首を囲炉裏の火であぶっていて、源四郎たちを見ると、「また首の数が増えたよ」と言って笑いました。
この源四郎たち。
一目散に宿へと逃げ帰ったのでした。
・一目散=一目坊
・三坂春編(みさかはるよし・1704?~1765・会津藩士)
・『老媼茶話』(ろうおうさわ・会津地方の怪談奇話)