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778 火車の女
火車の女は怪異の一種です。
これは江戸時代前期の仮名草子『因果物語』に「生ながら火車にとられし女の事」と題し、次のような話があります。
その昔。
河内国八尾にあった庄屋の妻は強欲な性格で、住み込みの下男下女らを冷酷に扱い、さらには飯を十分に食べさせていませんでした。
そんなある夜。
庄屋の知人の男が、庄屋の屋敷の上に浮かぶ、炎に包まれた車を目にしました。
その炎の中には、大男二人が庄屋の妻の両腕をつかんでおり、そのまま空高く飛び去っていきました。
知人が驚いて庄屋を訪ねると、つい今しがた大男二人が現れて、有無を言わせず、妻を生きながらにして地獄に連れていったといいます。
この火車の女。
ずいぶんと高飛車でした。
・高飛車=空高く飛び去って
・高飛車=高圧的な態度
・『因果物語(いんがものがたり』(江戸時代前期の絵草子、仮名草子)




