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773 はじかき
はじかきという妖怪がおります。
絵巻物によっては名称が「はじっかき」とも記されており、全身ふっくらとした白い体をしていて、両手で恥ずかしそうに頭を抱える、どれも何ともかわいらしい姿で描かれています。
江戸時代後期、尾田郷澄の絵巻物『百鬼夜行絵巻』にも描かれていますが、詳細はほとんどわかっておらず、中国の伝説「謝豹虫」が元になったと考えられています。
ちなみに謝豹虫は「恥ずかしい、おそれ多い、といった感情」が凝り固まって生まれる虫で、普段は地面の下の穴に棲んでいて、前足で頭をおおっていました。
このはじかき。
穴の外で人に出遭うとこう言ったといいます。
「穴があったら入りたい……」
・穴があったら入りたい=恥ずかしくて人に顔を見られるのがつらく、どこかに身を隠してしまいたい
・尾田郷澄(おだごうちょう・生没不明)
・『百鬼夜行絵巻』(ひゃっきやこうえまき・妖怪絵巻)