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77 杓子岩
杓子岩は怪異の一種です。
これは猫の霊がとり憑いた岩で、岡山県苫田郡鏡野町に次のような話が伝わっています。
その昔。
ある飼い猫が家人に隠れて味噌をなめました。
これに気づいた家人はひどく腹を立て、そばにあった杓子で打ち殺し、死骸を箱神社の近くにあった岩の前に捨てました。
その後。
夜になって箱神社のそばを通りかかると、「味噌をくれー」と声がして、岩から大きな杓子が突き出るようになりました。
猫の怨霊が岩にとり憑いたのでした。
それ以来。
味噌をやらない者はひどい目に遭うようになり、日が暮れてこの岩の前を通る者は、誰もが紙に包んだ味噌を持って歩くようになったといいます。
それこそ猫も杓子もでした。
・飼い猫=味噌=杓子岩
・猫も杓子も=だれもかれも、なにもかも




