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769 川姫1
川姫という妖怪がおります。
これは川などの水辺に現れ、出遭った男をときめかせては魂を吸い取ったといい、高知県に次のような話が伝わっています。
ある雨の夜。
男が友人宅を訪ねていた道中、怪しげな女が糸巻きに糸を巻いていました。
男は化け物だと直感し、刀を抜いて糸を斬ったところ、女は笑いながら姿を消しました。
男が友人にこの話をしたところ、友人は「糸を切ると、刀は斬れ味が落ちる」と言って、自分の刀を男に渡しました。
帰り道。
男は再び女に出遭いました。
女が言います。
「刀では私を斬れません」
「何だと!」
男は友人の刀で川姫に斬りかかりました。
女が笑い声を残して消えます。
この川姫。
男は太刀打ちできませんでした。
・太刀打ち=刀で斬りかかりる
・太刀打ち=まともに張り合って戦う