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764 一反木綿
一反木綿という妖怪がおります。
鹿児島県肝属郡肝付町に伝承があり、これは長さおよそ10メートル、幅30センチほどの布の化け物とされています。
夕暮れ時。
一反木綿は空から飛んできて人の首を締めたり、顔をおおって窒息死させたり、反物の状態でくるくると回りながら人の体に巻きついて、空高く連れ去りました。
ある夜。
某武士が家路を急いでいたところ、白い布がくるくる舞いながら降りてきて、武士の首を締め上げるように巻きついてきました。
武士が脇差しで斬りつけて強く抵抗したところ、布はそれ以上もめることを嫌ったのか、そのときは飛び去っていったといいます。
この一反木綿。
いったんもめんで飛び去りました。
・いったんもめんで=一反木綿で=一旦もめないで




