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763 元興寺の鬼
元興寺の鬼は平安時代初期の説話集『日本霊異記』に話があり、江戸時代中期、鳥山石燕の妖怪画集『画図百鬼夜行』では僧の姿をした鬼として描かれています。
その昔。
奈良の元興寺の小僧たちが、毎晩のように鬼に喰い殺されるということが続きました。
ある日。
小僧の中の一人に雷神の申し子がいて、この童子が鐘楼に隠れて鬼の出現を待ちました。
深夜、鬼が現れると飛びかかり、頭の毛を掴んで捕まえたのですが、鬼は髪をはいで逃げました。
その血痕をたどっていくと、かつて元興寺で働いていた無頼な男の墓に着いたことから、この男の死霊が鬼になっていたことがわかりました。
元興寺の鬼がつぶやきます。
「カミも仏もないな」
・カミ=髪=神
・神も仏もない=世の無情を嘆く
・『日本霊異記』(平安初期成立の仏教説話集)
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)
・『図画百鬼夜行』(がずひゃっきやこう)




