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760 たくろう火
たくろう火は怪火の一種です。
これは江戸時代の安芸広島藩の地誌『芸藩通志』などに記述があり、名称の「たくろう」は、比べるという意味の古語「た比ぶ」に由来するものだと考えられています。
夏から秋にかけての夜。
たくろう火は二つの火が海上に並んで現れることから、「比べ火」とも呼ばれ、かつては瀬戸内海を交通路とする船乗りたちにとって、よく知られた存在であったといわれています。
また広島中部に次のような話が伝わっています。
その昔。
非業の死を遂げた二人の女が、「京女郎」と「筑紫女郎」と呼ばれる二つの岩と化し、その霊がたくろう火になりました。
このたくろう火。
その美しさは、ほかのヒではなかったといわれています。
・ほかのヒでは=ほかの比では=ほかの火では
・『芸藩通志』=安芸国広島藩の地誌で、1825年に完成