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753 龕の精1
龕の精は精霊の一種です。
沖縄県国頭郡に伝承があり、龕は棺を載せて担ぐための葬具のことで、古い龕が牛やヤギなどに化けて人を襲ったといわれています。
ある晩。
某男が隣村から帰る途中、真白なヤギに出遭いました。
「どこのヤギだろう?」
男はヤギを追いまわした末、浜でついにこれを捕えて縄で縛りあげました。
男がヤギを浜に残し、家に帰って妻にそのことを話したところ、その夜に死んでしまいました。
翌朝。
妻がヤギを連れ帰ろうと浜に行ってみたところ、そこにはヤギではなく縄で縛った龕がありました。
「あの人、ヤギだって言ってたのに……」
龕の精が教えます。
「ヤギじゃない、わしの真の姿は龕だ」
「ガーン」
・ガーン=龕=ガーン(ショック)