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748 苧うに
苧うにという妖怪がおります。
これは江戸時代中期、鳥山石燕の妖怪画集『画図百鬼夜行』にあり、口が耳まで裂けた顔で、全身が長い毛におおわれた姿で描かれています。
苧は麻などの繊維から紡いだ糸で、苧うにの長い髪がこれに似ていることから、こう名付けたとされています。
また、苧から糸を紡ぐ山姥の民話が各地にあることから、苧うには山姥だともいわれています。
その民話のひとつ。
女たちが麻から糸を紡いでいると、そこへ苧うにが現われ「おれも紡いでやる」と手伝い始め、麻を噛んでは糸を引き出し、ものすごい速さで糸を紡いでいきました。
この苧うに。
紡ぐ糸がなくなると厠に寄ってから帰りました。
イトはありませんでした。
・イト=糸=意図
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)
・『図画百鬼夜行』(がずひゃっきやこう)




