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744 猪口暮露
猪口暮露という妖怪がおります。
江戸時代中期、鳥山石燕の妖怪画集『百器徒然袋』にあり、酒を飲む猪口を頭にかぶった多くの虚無僧姿の化け物たちが、箱から現れる様子が描かれています。
解説文には「唐の玄宗皇帝が病床にあった際、鍾馗が夢の中に現れた鬼たちを退治した」という逸話があり、石燕は猪口暮露をその鬼たちに例えているとされています。
暮露とは禅宗や普化宗の剃髪していない半僧半俗の托鉢僧のことで、中世末頃からは虚無僧となって托鉢をしていました。
この猪口暮露。
好きな酒を飲み過ぎて、たまに人前で正体を現していたといいます。
酔ってついボロを出したのでした。
・ボロ=暮露
・ボロ=欠点や不都合な点が隠しきれずに明らかになる
・托鉢=信者の家々を巡り、生活に必要な最低限の食糧などを乞う
・玄宗(げんそう・685~762年・唐の第9代皇帝)
・鳥山石燕(とりやませきえん・1712~1788・画家)
・『百器徒然袋』(ひゃっきつれづれぶくろ)




