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74 豆狸1
豆狸は化け狸の一種です。
広げると8畳もある大きな金玉を持っており、その金玉を広げることで家や部屋などの幻を人に見せたり、また自ら金玉をかぶって人に化けたりしたといい、江戸時代後期、桃山人の奇談集『絵本百物語』に次のような話があります。
ある夏の夜。
某男が家路を歩いていると、いつも通る川端に見慣れぬ一軒の家があり、ほんのり明かりが灯っていました。
男は明かりに吸い寄せられるように屋敷内に進み入り、それから手入れされた庭を抜けるとそこには縁があり、一人の美しい女が座っていました。
奥にはきれいに片づいた部屋が見えます。
男は女に声をかけました。
「部屋、きれいにされていますね」
「あら、タマタマですわ」
・タマタマ=たまたま=金玉
・桃山人(とうさんじん・1804~1844・戯作者)
・『絵本百物語』(1841年刊行・奇談集)




