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739 一本松の女
一本松の女という妖怪がおります。
秋田県出身の怪奇作家、佐藤有文が自らの著『日本妖怪図鑑』の中で紹介し、千葉県の妖怪として次のような説明をしています。
「一本松の女は一本足の素っ裸の美女である。
この女は手で胸を隠して松の木のそばに立ち、付近を通る者がいるとそこへ引きずり込み、自分と同じような姿にするため、その者の足を一本だけ喰いちぎった」
この妖怪の存在根拠となる伝承や書物が見当たらないことから、当時テレビの影響で、怪獣に夢中だった子供たちを妖怪好きにしようと考えた佐藤が、自ら創作した妖怪ではないかといわれています。
この一本松の女。
うまくだまされて足を失った男が嘆きます。
「一本取られちまったよ」
・一本取られ=一本だけ喰いちぎった
・一本取られる=相手が自分を打ち負かしたことを認める表現
・佐藤有文(さとうありふみ・1939~1999・怪奇作家・オカルト研究者)
・『日本妖怪図鑑』(日本に伝わる妖怪を紹介)




