73/919
73 竹切狸
竹切狸は化け狸の一種です。
京都府亀岡市に伝承があり、竹切狸は山の竹林で竹を切る音を立て、その音は山囃子といわれていました。
ある日の夕暮れどき。
男が山に薪を拾いに行くと、チョン、チョンと竹の小枝を払う音が聞こえました。
キィキィ、キィキィ。
続いて竹の根元を切る音が聞こえてきました。
――これが山囃子?
男がそう思って怪しんでいると、最後にザザッと竹の倒れる音がしました。
翌朝。
男は昨夕の音のことが気になり、山囃子が聞こえた竹林に行ってみましたが、竹が切られた痕跡はどこにも見つかりませんでした。
ただそこには風にゆれ、ザーザーと音を立てている竹バヤシがあるばかりだったといいます。
・バヤシ=林=囃子
・囃子=四拍子(笛、大鼓、小鼓、太鼓)でもって謡や能をはやしたてる。ほかに祭で使われる祭囃子などがある。




