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729 長面妖女
長面妖女という妖怪がおります。
石川県加賀市に伝承があり、江戸時代中期、堀麦水の奇談集『三州奇談』に次のようなことが記されています。
その昔。
津原徳斉という男が大聖寺からの帰り、下げていた提灯の灯が不意に消え、かわりに道の先に提灯の明かりが現れ、その中に女の姿が揺れました。
その明かりは家の方角へと向かっていきます。
これ幸いと、徳斉がその明かりについていくと、女の顔が突如として伸び始め、やがて3メートルほどにも長くなりました。
その顔が近くにいた犬を捕えて一口で喰らいました。
徳斉は驚いて物陰へと隠れました。
女は犬を喰い終わると顔が縮んで元に戻りました。
その長面妖女。
何食わぬ顔をしていたといいます。
・何食わぬ顔=何も食べていないという顔
・何食わぬ顔=何も知らない、自分には関係ないという顔つき
・堀麦水(ほりばくすい・1718~1783・俳人)
『三州奇談』(さんしゆうきだん・加賀・能登・越中の奇談・怪談・珍談)




