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723 蛇王姫
蛇王姫は伝説の一種で、大阪府泉南市に次のような話が伝わっています。
文政年間の頃。
長慶寺という寺の裏に大きな古池があり、そこには蛇王姫という大蛇が、大勢の手下を従えて棲んでいました。
その頃。
長慶寺の住職は鐘山という美男の和尚でした。
蛇王姫はこの和尚に恋い焦がれて夢中になるのですが、あるとき美しい娘に化けて部屋に忍び込み、鐘山和尚に抱きつきました。
鐘山は驚いて、とっさに刀を振り下ろしました。
すると娘の姿はかき消え、かわりに腹を切り割られた大蛇が苦しげにのたうっていました。
死の間際。
蛇王姫は己の行いを詫び、死後は寺を守ることを約束したあと、
「和尚様が好きでした」
腹を割って打ち明けたといいます。
・腹を割って=腹を切り割られた
・腹を割って=隠すことなく全てをさらけ出す
・文政年間=1818年~1831年