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721 片脚上臈
片脚上臈という妖怪がおります。
愛知県新城市に伝承があり、栃の窪という地からハダナシ山にかけて現れた、片脚の美しい上臈だったといわれています。
新城市にある阿寺には、子宝に霊験のある子抱き石という石があり、そこへ行く女は草履を履いていかなければならないのですが、行くと片方の草履を奪われたといいます。
また、これは山中で猟師の獲物を奪うともいい、猟師が獲った獲物から離れるときは猟銃と山刀を十字に組んで置き、その上に袢纏をかけておくことが、片脚上臈を避けるマジナイになりました。
このマジナイ。
片脚上臈が袢纏に近づくと、体が勝手にハンテンしてしまうのでした。
・ハンテン=袢纏=反転
・袢纏=丈の短い上着で、胸ひもをつけず襟を折り返さない着物
・上臈=遊女、女郎




