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72 死人憑
死人憑は怪異の一種です。
死体に何者かの霊がとり憑くというもので、鳥取県の郷土研究家、荻原直正の『因伯伝説集』に次のような話があります。
因幡国岩井郡の某村。
百姓の男が長く患った末に死に、家人らが僧を待っていると、死んだ男が急に立ち上がりました。
男の死体が歩きます。
これにはみなが腰を抜かすほど驚きました。
その後。
男は飯を食べるなどして動きまわっていましたが、やがて体が腐り、悪臭を放ち始めました。
困った家人は男を土蔵に閉じ込めました。
男は飯を食わせろと暴れていましたが、しばらくすると倒れて動かなくなりました。
これには後日譚があります。
あの日。
女房は動く死体にゾンビキしたといいます。
・ゾンビキ=ドン引き
・ゾンビキ=ゾンビ=死人
・ドン引き=その場の雰囲気が急にしらける。全員が引いた状態
・荻原直正(1886~1961・郷土研究家)
『因伯伝説集』(因幡・伯耆の民話・伝説)




