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717 宗旦狐2
宗旦狐は京都市上京区の相国寺に伝わる妖狐です。
時代は幕末。
宗旦狐は修行僧となって、日々、ほかの僧たちとともに寺で修行をしておりました。
ある年の盆。
門前の豆腐屋が資金難だと知った宗旦狐は、蓮の葉を集めて売り、その金で大豆を買って豆腐屋に助力しました。
豆腐屋はお礼にとネズミの天ぷらを作り、それを袋に入れて宗旦狐に贈りました。
宗旦狐はこまりました。
ネズミを食うと神通力が失われるのです。
わかってはいても大好物、宗旦狐は我慢できずに袋のネズミを食べてしまいました。
その直後。
野良犬たちが集まってきて、鼻をひくつかせながら宗旦狐を取りかこみました。
宗旦狐はとっさに思いました。
――袋のネズミか……。
・袋のネズミ=ネズミの天ぷら
・袋のネズミ=逃げ出すことのできない状況